アクマの果実
それからも、私は面倒なことに少しづつ巻き込まれて。

家へ帰るときに、工事だからって少し違う道を通ったら、また2人を見かけた。

2人は屈んで何かしているようだ。



...。



よく見ると、野良猫を撫でているみたい。


おい、そういえばこいつ猫食うんじゃなかったけ...?

ねこちゃんにげろー。


少し気になって近くによる。

「おいしいですねー。

...あ、河津さん。」

「あの、今リアルタイムで食ってる?」

「はい。」

ど、どこか傷つけられたのか!?

見る限りでは、猫に変化は無さそうだけど。

「どこ食べたの...?」

「うーん...。
どこというか、少しお裾分けをもらっているといいますか...。

ほら、すごく甘えてくれているじゃないですか。」

「え、うんまあ。そうは見えるけど。
それがなに?」

「こんなに可愛く甘えてくれると、お腹がいっぱいになりますよね。」

「いや、ならん。」

私と安澄が声を揃えてそう言う。

一体どういうことなのか。

もしかして...。

「この子のまごころ、美味しいです。」



あ...。



「どういうこと?」

「僕は主に、人のまごころを食べるんです。猫ちゃんでもいいですけどね。特に、思いやりとか、喜びとか、そういう
温かい気持ちを美味しく頂いてます。」

「へえ...。
でも食べられた方はどうなるの?」

「一時的かつ自然に湧き上がった気持ちが
主食なので、その人に影響を及ぼすことはあまりないと思います。加減もしますし。

あとは、そういった気持ちがこもったものに触れたり、特に手作りの食べ物を食べたりするのもいいんです。基本、人間の食べものって生産過程で色んな方の気持ちがこもっていることが多いんですけどね。」

「だから河津さんの作ったラーメンとか、おにぎりをあんなに美味しそうに食べてたんだな。」

「はい。河津さんのまごころがいっぱいこもってました!」

そ、そーかなぁ?

べつに...適当に作っただけだけどなー。

そんなに美味しいって食べてくれるなら...。

まあ、良かった、かな?
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