アクマの果実
「おいしい?秌場くん。」
「(*´꒳`*)」
顔が幸せそうだから、おにぎり今日も満足してもらえたみたいだ。
なんだか、親に内緒で猫を飼ってるような気持ちに似てるかも。
「そういえば秌場くん、転校してきたとき私のこと気になってたよね?」
「はい。
河津さんのこと、よく覚えてます。」
「やっぱり会ったことあるの?
なんとなくぐらいで、私はあまり覚えてないんだけど。」
「お腹が空いて、倒れそうなときに、まだ小さい河津さんが転んで怪我をしているところを見つけて、処置をしたら喜んでくれたんですよ。ありがとうって言ってくれました。」
「...それはまあ、ありがとうだね。」
「...はい。」
「あ、私がだよ?怪我してたの処置してもらったんだから。」
「はい。でも、僕もエネルギーをもらえました。あの、ありがとうの言葉と笑顔で1週間は持ちましたから。」
「言葉と表情って大事なんだね。」
「はい。人間の持つ力ってすごいと思います。」
「逆に、優しくされなかったら苦しくなるの?」
「お腹空いちゃいますね。
それがもっと続くと、苦しく感じてしまいます。」
「悪魔だってこと隠してれば案外好かれやすいと思うんだけどな、秌場くんって。」
「そうですか?」
「うん。良い人って感じ。」
「良い人...ですか。あまり自覚はないですね。好かれやすいかどうかはわかりませんが、この学校で過ごしていると、不思議な感覚になることはありますね。」
「不思議な感覚?」
「満たすようで空いてしまうような、なんだか変な感覚です。すみません。あまりうまく言葉にできないんですけど。」
「それも、みんなから向けられてる気持ちとか、思いが影響してるってことなのかな?」
「きっと...あ、そういえば。
今日下駄箱にこんなものが入ってたんですけど。ここから不思議なものを感じるんです。」
そう言って秌場が取り出すのは...。
「これって...ラブレターじゃない??」
「らぶれたー?」
「えっと...悪魔はどうか知らないけど、人間って恋をするの。」
「恋...。知っています。人間は特定の異性に対して特別な感情が発現するんだそうですね。」
「うん。好きになるの。それで、大抵の場合、その気持ちを相手に伝えて、どう思ってるかって確認するの。
相手も好きって思ってたら、そこで特別な関係になれるっていうか...。」
って、未経験者の私が何を偉そうに説明しちゃってるんだろうか。
「たぶん、その手紙の送り主は、秌場くんのことが好きなんだよ。」
「そうなんですか...。」
さすが、モテる男子だな...。
悪魔に男子っていう分類を当てはめるのもどうかなって感じだけど。
「きっと喜ばしいことですよね。好きって特別な気持ちだと思うので、それを僕に向けてくれるのはとても嬉しいです。」
「...良かったじゃん。」
「でも、僕はきっと人間の感情を味見程度にしか理解できないでしょうし、本来人間同士で起こる関係に介入するのは良くないことですよね...?」
「うーん。
まあ、秌場くんがどう思うかでいいんじゃない?」
「そうですか...。少し考えてみますね。」
...なんだか。
それでもし、秌場くんがその子と両思いになって、付き合っちゃったら...。
こうやっておにぎりとか、作らなくていいんだろうけど...。
代わりに、彼女が作ったお弁当とか、彼女が喜ぶ顔とか見て、それで満たされるの...?
私じゃなくて...違う子のまごころで...?
って、私何考えてるんだろ。
そんなの私には全然関係ないことなのに。
「(*´꒳`*)」
顔が幸せそうだから、おにぎり今日も満足してもらえたみたいだ。
なんだか、親に内緒で猫を飼ってるような気持ちに似てるかも。
「そういえば秌場くん、転校してきたとき私のこと気になってたよね?」
「はい。
河津さんのこと、よく覚えてます。」
「やっぱり会ったことあるの?
なんとなくぐらいで、私はあまり覚えてないんだけど。」
「お腹が空いて、倒れそうなときに、まだ小さい河津さんが転んで怪我をしているところを見つけて、処置をしたら喜んでくれたんですよ。ありがとうって言ってくれました。」
「...それはまあ、ありがとうだね。」
「...はい。」
「あ、私がだよ?怪我してたの処置してもらったんだから。」
「はい。でも、僕もエネルギーをもらえました。あの、ありがとうの言葉と笑顔で1週間は持ちましたから。」
「言葉と表情って大事なんだね。」
「はい。人間の持つ力ってすごいと思います。」
「逆に、優しくされなかったら苦しくなるの?」
「お腹空いちゃいますね。
それがもっと続くと、苦しく感じてしまいます。」
「悪魔だってこと隠してれば案外好かれやすいと思うんだけどな、秌場くんって。」
「そうですか?」
「うん。良い人って感じ。」
「良い人...ですか。あまり自覚はないですね。好かれやすいかどうかはわかりませんが、この学校で過ごしていると、不思議な感覚になることはありますね。」
「不思議な感覚?」
「満たすようで空いてしまうような、なんだか変な感覚です。すみません。あまりうまく言葉にできないんですけど。」
「それも、みんなから向けられてる気持ちとか、思いが影響してるってことなのかな?」
「きっと...あ、そういえば。
今日下駄箱にこんなものが入ってたんですけど。ここから不思議なものを感じるんです。」
そう言って秌場が取り出すのは...。
「これって...ラブレターじゃない??」
「らぶれたー?」
「えっと...悪魔はどうか知らないけど、人間って恋をするの。」
「恋...。知っています。人間は特定の異性に対して特別な感情が発現するんだそうですね。」
「うん。好きになるの。それで、大抵の場合、その気持ちを相手に伝えて、どう思ってるかって確認するの。
相手も好きって思ってたら、そこで特別な関係になれるっていうか...。」
って、未経験者の私が何を偉そうに説明しちゃってるんだろうか。
「たぶん、その手紙の送り主は、秌場くんのことが好きなんだよ。」
「そうなんですか...。」
さすが、モテる男子だな...。
悪魔に男子っていう分類を当てはめるのもどうかなって感じだけど。
「きっと喜ばしいことですよね。好きって特別な気持ちだと思うので、それを僕に向けてくれるのはとても嬉しいです。」
「...良かったじゃん。」
「でも、僕はきっと人間の感情を味見程度にしか理解できないでしょうし、本来人間同士で起こる関係に介入するのは良くないことですよね...?」
「うーん。
まあ、秌場くんがどう思うかでいいんじゃない?」
「そうですか...。少し考えてみますね。」
...なんだか。
それでもし、秌場くんがその子と両思いになって、付き合っちゃったら...。
こうやっておにぎりとか、作らなくていいんだろうけど...。
代わりに、彼女が作ったお弁当とか、彼女が喜ぶ顔とか見て、それで満たされるの...?
私じゃなくて...違う子のまごころで...?
って、私何考えてるんだろ。
そんなの私には全然関係ないことなのに。