アクマの果実
良かった。

一応食材とか調味料とか、人が食うもんあった。

「おいしいです...!」

「確かにうまい。調理師目指したらどう?」

「そ、それはどうも...。」

こいつら適当に作っても味わかんないんじゃないか...?

特に秌場は...。

でも、


幸せそうに食べてるな...。


人に料理作るなんて、今までなかったから。

両親は仕事で、帰ってくるの遅いし。

今みたいに出張とかもしょっちゅうで、私は自分で作って食べることが多かった。

だから...。

まあ、良かったかなって。

「河津さんって本当に優しいですね。
僕たちに夜ご飯作ってくれたのに、嬉しそうにしてくれるなんて。」

「え...、うん...。

自分の作った料理を食べてもらうってあまりなかったから。
美味しいって言ってもらえて嬉しいっていうか...。」

「うれしい...って、おいしいですね。」

おいしいですか...。

それならいいけど。

「そうやって勝手に河津さんの感情を食べて大丈夫なの?」

「大丈夫...ですかね。

河津さん、大丈夫ですか?」

「え、何が...?」

「何ともないですか?」

「う、うん...なんとも。」

「それは良かったです。
つい食べすぎちゃったかと思って。」

そっか。

こいつ少しずつでも食ってるんだ...。

一時的な感情を食ってるって言ってるから今のところ大丈夫だけど。

というか...。

本当に感情食うってなんなんだろう。

まごころだっけ...?

どんな味なんだろう...。

「もっと食べてもいいですか?」

「ご飯食べてください。」

「もちろんご飯ですよ。」

「私をご飯にしないでください。なんか危険なので。
食べるならそこのおかずを。」

「おいしいですね。河津さん。
皆で食べるって、それだけですごくおいしいですよね。」

「俺の何かまで浸食してる?」

「雰囲気ですよ。」

...よく分からない。

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