アクマの果実
「河津さん、今日もご飯作っていただけるなんて、嬉しいです!」

「うん。まあ、私にはこのくらいしかできないし。お世話になってるから。」

「いえいえ。こちらが申し訳ないくらいです。」

「今日体育あったでしょ?
だからお腹空いたんじゃないかと思って。」

「そういえば、今日は秌場くん倒れなかったね。」

「はい。最近はたくさん食べものを頂いてますから。
栄養足りたみたいです。」

「2人とも、学校中の人気者だもんね。」

「そうなんですか?」

「うん。そうだよ。」

「嬉しいです。
最近は嬉しいことばかりですね。」

その笑顔は、きっと自分の栄養にはならないんだもんな...。

「そういえば、秌場くん。

手紙の返事はしたの?」

「手紙って...。ラブレター?」

「そうそう。
秌場くんももらったって。」

「ってことは安澄さんも?」

「そう。交際のお誘いってやつ。
俺は人間じゃないし、何かと弊害になってしまいそうだから断ったよ。」

「へえ...。」

ほんとに、人気者だな...。

「僕も、申し訳ないですけど、
お断りしました。僕は悪魔なので、本当は人間と関わることを控えたほうがいいんですよね。」

「そうだね。関わる人はなるべく少ないほうがいい。」

「あの、私は...?」

「河津さんとは仲良くしていきたいです。」

「そうだな。」

「な、なんでぇ...?」

「河津さんの作るご飯が美味しいから。
(2人)」

おいおい...。

...。

きっと元々、深くて狭い関係が好きなだけなんだろうな。





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