アクマの果実
目が覚めると。


「秌場くん...?」


...。


目の前にまた彼がいるということは。

というか、こうして密着しているということは...!!


「あ、秌場くん、ごめん!!」

「...いえ、大丈夫ですか?」

「うん...。
勝手にくっついてごめん。」

あ...。

て、手...??

手も...握って...。

「あ...。」

秌場くんの手と一緒に握られていたのは、赤い宝石のブローチ。

「ずっと青色でした。
でも、そんな悲しみも綺麗で。」

「...。」

「河津さんが、とても綺麗で...。」

や、

やだ...。

朝から、こんな...。

こんなに、思いやりのこもった眼差しで...。

見つめられたことなんて、ないのに。


や、な、

泣けて、くる...。

「秌場く...ん。」

「河津さん。」


腕に、飛び込んでしまった。

あたたかくて。

つらい思いも、忘れられる...。

こんなわたし...恥ずかしいのに。

子どもみたいに、甘えて。

...。


「あ、取り込み中だった?」

げっ...。

そういえばここ安澄の家だった。

「秌場くんの悪魔的優しさに酔いしれてるところ悪いんだけど、朝食作ったから、冷めないうちに食べてくれる?」

「...は、はい。」

ほんとに悪魔的優しさ...。

いや、こいつ...これで朝食摂取済みか??

...。

えへへ、みたいに笑うのやめろ。

ちょっとかわいいから。
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