アクマの果実
一時、日用品を揃えるなどするために、家の方向に戻っているけど。
「あの...なんで私を秌場くんたちのところに置いてほしいって言ったの?」
「考えてみたらその方が手間が少ないし安心だろ。彼は見たところ常識が備わっていそうだったし。」
うーん。
まあ、そうなんだけど。
普通、娘が男と一緒に住むって警戒しない?
しかも悪魔と死神の家だからね?
と、ここで母が。
「そういえば、結奈。
眼鏡はしていないの?」
「あ...うん...。
その方が見やすいというか...。」
「度が合わなくなったの?」
「ううん。えっと...よく分からないけど、視力が回復してるみたい。」
「そう?
てっきり、あの子に惚れこんでるからだと思ったわ。」
「え!?」
「あなたも大胆なことするようになったのね。男の子と一緒に寝泊まりするなんて。」
「そ、それはたまたま...。」
「案外まともでいい子じゃない。
安澄って人はどうか知らないけど。
ね、お父さん。」
「そうだな。俺は元人事で採用担当だったし、多少人を見る目はあるけど、彼なら大丈夫そうだ。」
何に対して大丈夫なの?それ。
「ゆくゆくは付き合っちゃうのかしらね。」
「そ、そんなわけ...!」
「分からないわよ。
お父さんも、元は私の実家の居候だったし。」
「そうなの...?」
「親同士が知人で、志望する学校に近いから泊めてもらってたんだよ。」
「そ、それで?」
「ここから先は長くなるから割愛するわ。
でも、先に手を出してきたのは向こうからよ。」
「そんな言い方するなよ。
同意の上だろう。」
「そうだったかしら。
羽目を外して泥酔していたからじゃなくて?」
「羽目を外したんじゃない。
上司に言われて仕方なくだな。」
「ゆくゆくはその上司とやらとも仲違いして、事業ごと丸投げされて背負わされたくせに。」
「その結果、俺は好きに仕事できるし、お前たちを問題なく養えているからいいじゃないか。」
「勘違いしないで。
私はまだ働いてるから自分の分は自分で賄っているわ。あなたが養っているのは、結奈の学費ぐらいじゃない。生活費は私の預金からだし。」
「そうは言っても、お前は俺の事業を補助する立場だろう。しかも、俺の立案や計画にいつも文句言ってるだけじゃないか。」
「そんなことを言っていると、いずれ私も、いつぞやの上司や、同僚たちのような存在になるわよ。
私がいなくなれば、崩れていく様が目に見えるわ。」
「お前が俺のチームから外れたって、お前自身が困るだけじゃないのか?」
「ご心配なく。既に声がけはいくつも頂いてるわ。今より条件がいいところも沢山。そうすれば、私がいるから結奈を1人きりにさせることもなくなる。」
「そんなことを言うなら、抜ければいいだろ。
俺の事業に携われなんて、お願いしたつもりはないんだし。」
「そう、じゃ、そうさせてもらうわ。」
どうしよう。
こんなことで喧嘩になるなんて...。
「というわけで、結奈はどうする?
私についてくるわよね?」
「え?
えっと...。」
「え、ちょっと待て。
別に離婚するとは言ってないだろ。」
「だって、別に私は1人でも結奈を養っていけるし。そうなればいっそのこと、離婚した方がスッキリするじゃない。」
「なんでそんな話になるんだよ。
仕事が別になったぐらいで。」
「いいじゃない。
あなたはその分結奈の学費払わなくて済むのよ。私のことお荷物だとも思わなくて済むし。結奈に会いたくなれば別に会わせてあげるわよ。」
「別に、荷物だなんて思ってないだろ。
というか、本気なのか?」
「冗談で言ってると思ってたの?
あまり私をなめないで欲しいわね。」
「離婚って...お前さては他に男がいるんだろう!」
「いつそんな余裕があるって言うのよ。
いつもあなたの側で仕事させられてばっかじゃない。」
「余裕があればそうするんだろう。
だからさっきから抜けるとか...。」
「あら、何か問題でも?」
「問題って...!
あるに決まってるだろ。子どももいるのに何を考えて...。」
「もう結奈も大きくなったし、誰と恋愛するかは私の自由じゃない?
別に結奈を育てないって言ってるわけじゃないんだから、いいでしょう?
あなたはいつも固定観念を押し付けるのね。なんのために海外で仕事してるのよ。」
「お前...そんなに俺のことが嫌いなのか?」
「別に嫌いとは言ってないわ。」
「じゃあ、なんで離婚するなんて言うんだよ。」
「仕事上別れるならなおのこと、家計的にその方が効率的だからよ。
税金対策にもなるわ。制度上離れた方が賢明じゃない?」
「そんなことのために...。
俺は認めない。」
「どうして?」
「俺はそんなこと思ってないし。」
「そんなことって?」
「離婚なんて、したくない。
離れたくないんだよ。」
「仕事上離れるんだからどっちでも一緒じゃない。」
「全く違う。
それに...。」
「なに?」
「お前に浮気されるのは耐えられない。
だから、お前にそんな余裕与えたくない。
やっぱり俺と仕事しろ。」
「そうやっていつまでも私を束縛するつもり?」
「悪いか。」
「...悪くないわ。最初からそう言えばいいのよ。」
「お前こそ。本当は離れたくなかったんじゃないか。」
「別に?」
「素直じゃないな。」
「あなたの方こそ。」
「別に、俺はお前のこと、好きだけど?」
「そう。」
「そう、って、お前はどうなんだよ。」
「好きよ。」
「...そうか。」
そうやって、しばらくはさっきまでとは一転して静まる感じ...。
...なんだ、結局、のろけを見せられただけか。
振り回されるこっちの身にもなってほしい...なんて、いい雰囲気になってる2人には言えない。
「あの...なんで私を秌場くんたちのところに置いてほしいって言ったの?」
「考えてみたらその方が手間が少ないし安心だろ。彼は見たところ常識が備わっていそうだったし。」
うーん。
まあ、そうなんだけど。
普通、娘が男と一緒に住むって警戒しない?
しかも悪魔と死神の家だからね?
と、ここで母が。
「そういえば、結奈。
眼鏡はしていないの?」
「あ...うん...。
その方が見やすいというか...。」
「度が合わなくなったの?」
「ううん。えっと...よく分からないけど、視力が回復してるみたい。」
「そう?
てっきり、あの子に惚れこんでるからだと思ったわ。」
「え!?」
「あなたも大胆なことするようになったのね。男の子と一緒に寝泊まりするなんて。」
「そ、それはたまたま...。」
「案外まともでいい子じゃない。
安澄って人はどうか知らないけど。
ね、お父さん。」
「そうだな。俺は元人事で採用担当だったし、多少人を見る目はあるけど、彼なら大丈夫そうだ。」
何に対して大丈夫なの?それ。
「ゆくゆくは付き合っちゃうのかしらね。」
「そ、そんなわけ...!」
「分からないわよ。
お父さんも、元は私の実家の居候だったし。」
「そうなの...?」
「親同士が知人で、志望する学校に近いから泊めてもらってたんだよ。」
「そ、それで?」
「ここから先は長くなるから割愛するわ。
でも、先に手を出してきたのは向こうからよ。」
「そんな言い方するなよ。
同意の上だろう。」
「そうだったかしら。
羽目を外して泥酔していたからじゃなくて?」
「羽目を外したんじゃない。
上司に言われて仕方なくだな。」
「ゆくゆくはその上司とやらとも仲違いして、事業ごと丸投げされて背負わされたくせに。」
「その結果、俺は好きに仕事できるし、お前たちを問題なく養えているからいいじゃないか。」
「勘違いしないで。
私はまだ働いてるから自分の分は自分で賄っているわ。あなたが養っているのは、結奈の学費ぐらいじゃない。生活費は私の預金からだし。」
「そうは言っても、お前は俺の事業を補助する立場だろう。しかも、俺の立案や計画にいつも文句言ってるだけじゃないか。」
「そんなことを言っていると、いずれ私も、いつぞやの上司や、同僚たちのような存在になるわよ。
私がいなくなれば、崩れていく様が目に見えるわ。」
「お前が俺のチームから外れたって、お前自身が困るだけじゃないのか?」
「ご心配なく。既に声がけはいくつも頂いてるわ。今より条件がいいところも沢山。そうすれば、私がいるから結奈を1人きりにさせることもなくなる。」
「そんなことを言うなら、抜ければいいだろ。
俺の事業に携われなんて、お願いしたつもりはないんだし。」
「そう、じゃ、そうさせてもらうわ。」
どうしよう。
こんなことで喧嘩になるなんて...。
「というわけで、結奈はどうする?
私についてくるわよね?」
「え?
えっと...。」
「え、ちょっと待て。
別に離婚するとは言ってないだろ。」
「だって、別に私は1人でも結奈を養っていけるし。そうなればいっそのこと、離婚した方がスッキリするじゃない。」
「なんでそんな話になるんだよ。
仕事が別になったぐらいで。」
「いいじゃない。
あなたはその分結奈の学費払わなくて済むのよ。私のことお荷物だとも思わなくて済むし。結奈に会いたくなれば別に会わせてあげるわよ。」
「別に、荷物だなんて思ってないだろ。
というか、本気なのか?」
「冗談で言ってると思ってたの?
あまり私をなめないで欲しいわね。」
「離婚って...お前さては他に男がいるんだろう!」
「いつそんな余裕があるって言うのよ。
いつもあなたの側で仕事させられてばっかじゃない。」
「余裕があればそうするんだろう。
だからさっきから抜けるとか...。」
「あら、何か問題でも?」
「問題って...!
あるに決まってるだろ。子どももいるのに何を考えて...。」
「もう結奈も大きくなったし、誰と恋愛するかは私の自由じゃない?
別に結奈を育てないって言ってるわけじゃないんだから、いいでしょう?
あなたはいつも固定観念を押し付けるのね。なんのために海外で仕事してるのよ。」
「お前...そんなに俺のことが嫌いなのか?」
「別に嫌いとは言ってないわ。」
「じゃあ、なんで離婚するなんて言うんだよ。」
「仕事上別れるならなおのこと、家計的にその方が効率的だからよ。
税金対策にもなるわ。制度上離れた方が賢明じゃない?」
「そんなことのために...。
俺は認めない。」
「どうして?」
「俺はそんなこと思ってないし。」
「そんなことって?」
「離婚なんて、したくない。
離れたくないんだよ。」
「仕事上離れるんだからどっちでも一緒じゃない。」
「全く違う。
それに...。」
「なに?」
「お前に浮気されるのは耐えられない。
だから、お前にそんな余裕与えたくない。
やっぱり俺と仕事しろ。」
「そうやっていつまでも私を束縛するつもり?」
「悪いか。」
「...悪くないわ。最初からそう言えばいいのよ。」
「お前こそ。本当は離れたくなかったんじゃないか。」
「別に?」
「素直じゃないな。」
「あなたの方こそ。」
「別に、俺はお前のこと、好きだけど?」
「そう。」
「そう、って、お前はどうなんだよ。」
「好きよ。」
「...そうか。」
そうやって、しばらくはさっきまでとは一転して静まる感じ...。
...なんだ、結局、のろけを見せられただけか。
振り回されるこっちの身にもなってほしい...なんて、いい雰囲気になってる2人には言えない。