アクマの果実
「おはようございます、河津さん。」

「おはよう。
今日は秌場くんが朝ご飯作るの?」

「はい。昨日は本当にごちそうさまでした。」

ん...?

「秌場くん、河津さんからごちそうを頂いたみたいで、この通りご機嫌なんだよね。

恩返しがしたいみたいだよ。」

「恩返し...?」

「まあ、俺はなんとなく前から気づいてたけど、君、秌場くんにベタ惚れなんでしょ?
秌場くんも恋ってものを知って、有り難く
両想いみたいだし、満を持して付き合った方がいいんじゃない?」

「...!!」

え、え...!?!?

「いっぱい食べたんですけど。お腹がいっぱいになっても食べきれませんでした。」

「秌場くん、幸せ太りするかもね。」

「そうかもしれません。気をつけないと。」

「そうなれば俺は邪魔になるかな。」

「いえ、そんなことは。ここは安澄さんのお家ですから。」

「別にいいよ。
秌場くんは彼女と寝て、俺だけベッド独占するから。」

「え、ちょっ...!
あの、私はまだ...。」

「まだ返事してないの?
今したほうがいいよ。いつ秌場くんの気が変わるか分かんないんだから。」

「僕の気持ちはずっと変わりませんよ。
焦る必要もありませんし。」

「早めに付き合ったほうが、そのあと何かあったときに多くの損害賠償を請求できるらしいからね。」

「そうなんですね。でも、もし僕が河津さんを傷つけてしまったら、一生をかけて償っていきます。」

「君の一生をかけないほうがいいよ、長すぎるから。」

え...。

えっと、これは、どうすれば...?

結局あれは夢ではなかったってこと??

「はい、ご飯できました。」

まあ、とにかくご飯を食べてからじっくり考えよう。

「いただきます。」

って、食べようとするけど、その前に食べた安澄が驚いた顔をしている。

なんだろう。

やっぱり悪魔が作ると衝撃的な味になるのだろうか。

「秌場くん、めっちゃ美味いよこれ。」

「本当ですか?嬉しいです。」

「河津さんも食べてみなよ。」

「うん...。
わ、なにこれ、すごく美味しい!!」

「これもいける。」

「ほんとだ、美味しい!」

「ありがとうございます。僕も美味しいです。」

「河津さん、秌場くんと付き合っていっぱい美味しいご飯作ってもらいなよ。」

「うん、秌場くん、よろしく。」

「よろしくお願いします。」

なんだろう。

やっぱり昨日食べられたせいもあるのか、

ちっとも寂しくないな。

むしろ空いた隙間もすぐにあったかいもので満たされてく感じがする。

恋っていいな。
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