囚われのサンドリヨンと舞踏会
「あなたをここに連れて来たのはあの仮面をつけた青年よ。彼はおしゃれをしたいのにできない孤児をこの夢の世界に連れて来て、お姫様の気分を味わせる。でも、十二時の鐘が鳴るとお姫様から使用人か舞踏会に参加しているエキストラに役が変わってしまう。そして、永遠に元の世界には戻れない。悪夢の世界を繰り返してしまうの」

でも、このナイフであの青年を刺せば全てが終わる。そうジェルメーヌは言い、フローラの肩から手を離した。

「あなたをここに閉じ込めたくない。早くあの男を刺して!」

それだけを言い、ジェルメーヌは部屋を出て行く。残されたフローラは握らされたナイフを見つめた。



ジェルメーヌからあんな話を聞いたものの、フローラは青年を刺す気にはなれなかった。青年はとても優しい紳士で、フローラの話に楽しそうに微笑んでくれる。

「姫様、お召し替えを」

定期的にドレスは着替えることになっていて、フローラはわくわくしながらドレスに袖を通していた。こんなこと、現実の世界ではないだろう。
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