今宵、キミが砕け散る

 「悩んでるっていうか……」

 ただ、怖いんだ。

 「俺たちのやってること知ったら、宵は離れて行くと思う?」

 女はいつも自分のことばっかりだった。

 欲まみれで、濁っている瞳。

 正直俺は、女にいい思い出はない。

 寧ろ思い出すだけで胸糞悪くなるようなことばかりだった。

 でも、宵は違った。

 容姿や地位をで人を判断しない。

 媚びるような甘ったるくもなく高い声でもなく、心地のいい声。

 キツい香水は付けていなくて、包まれているような、落ち着く香り。

 ……あの子の側は暖かいんだ。

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