今宵、キミが砕け散る

 「……」
 「え、あの!」

 着ていたパーカーを彼女にかけて立ち上がる。

 「それあげる。あと迎え呼びな。んじゃ、私は帰る」

 背を向けて歩き出す。

 「ま、待って!」
 「ん?」

 「な、名前なんて言うんですか!」

 えー、通りすがりのAさんで良いんだけどな。
 
 でも、必死そうな彼女に私は口を開いた。

 「宵」
 「宵、ちゃん?」
 「ん」

 まるで初めておもちゃを貰った子供みたいに目が輝いている。

 「私、神崎優香!」
 「優香ね。覚えておくよ」

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