今宵、キミが砕け散る
佐城渚 side

 第一印象はただただ綺麗な人だな、だった。

 振り返ったときに、風に靡いた黒色の長い髪の毛は、彼女によく似合っていた。

 「宵ちゃんがね!」

 俺たちのお姫様は琴ちゃんにあってからずっと、彼女の話しばかりしていた。

 宵ちゃんが凄かった。

 宵ちゃんがかっこよかった。

 「宵ちゃんは私の恩人なんだ。だからそんな目で見ないで!」

 初めて俺たちに声を荒げた。

 姫ちゃんはこっちの世界に入ってきてもう随分と経つ。

 だからそういう、俺たちの変化にも気付いたのだと思う。

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