今宵、キミが砕け散る


 お母さんがいて、真紀がいて。


 たまに1人になってしまうときは、誕生日に買ってもらったゲームをする。


 何もない、平凡な日常。


 それは俺が知る、最大限の幸福だった。





 中学生になって環境が大きく変化した。それに伴って、自分も真紀も変わった。


 俺はそれなりに友達ができて、真紀は髪を金髪に染めた。


 お母さんも、変わってしまった。


 「ただいま」


 家に帰っても、お帰りは返って来なくなった。


 「お母さん……?」


 呼びかけても、返事はない。


 いつも家に漂っていた夕飯の匂いもない。


 「あら、帰ってきたのね」


 冷たい声、キツい香水。


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