今宵、キミが砕け散る


 初めて、好意を向けられることに嫌悪感を感じた。


 「だぁいすきよ」


 形のいい唇が、確かにそう言った。


 気づけばベットに押し倒されていて、目の前にいたのは目を光らせた獣のような女。


 唇が重なれば彼女の舌が入ってくる。


 「っ!」


 口内をかき混ぜて、少しの水音が耳に届いた。


 「やめろっ!」


 反射的に女を突き飛ばした。


 男達と女の力の差は歴然で、すんなりと離れたことに安堵する。



 
< 172 / 324 >

この作品をシェア

pagetop