今宵、キミが砕け散る
「おはよ」
キッチンに立って朝食を作る嶺緒は、私に気づくと朝から眩しいほどの笑みを見せた。
「おはよー。何かいいことでもあったの?」
そう聞けば、待ってましたと言わんばかりにニヤリと口角を上げて笑った。なんだか嶺緒に似合わない、大人の色気というものがでていて、少しドキッとした。
「おー、ちょっとな。俺、今日店臨時休業して実家に帰るわ」
「え、まじ?」
嶺緒が持ってきた朝食を口に運ぶ。
……うん、美味しい。
「まじまじ。弟がアメリカから帰ってきたんだよ」
そういう嶺緒の顔は、弟を思うお兄ちゃんの顔だった。