今宵、キミが砕け散る
「そっか。やっとなんだね」
前に、嶺緒から聞いたことがあった。
嶺緒の弟は自分とは比べ物にならないくらい頭がよくて、幼稚園のことから女の子にモテモテだったらしい。
嶺緒が無性愛で人を好きになれない、それは家族も例外ではなく、弟を愛してやれないことを理解してくれた。その上で、自分に懐いて慕ってくれた弟が、とても大切なんだと。
私は嶺緒の苦しみがわかるわけじゃない。だから、「好き」と「大切」は同じようなことではないかと思ったけど、どうやらそれは違うみたいだった。
そんな、昔からの理解者で、唯一無二の弟くんが留学先のアメリカから3年ぶりに帰ってくるようだ。