今宵、キミが砕け散る



 「っ、た……。なにすんの」


 「それはこっちの台詞ですけど」



 デコピンされたおでこを抑えて、恨めしげに睨むが全く効果はなく呆れた声が返って来た。



 「はぁ、貴女って人は……。はあぁ」



 わざとらしく大きく溜め息を吐く美苑。髪の隙間から見えた赤い耳に、私はもしかしてと、口角を上げた。



 「……照れた?」



 私の想像では、この後美苑が狼狽える姿が脳内に浮かんでいた。だけど……、



 「あ"?」



 鋭い眼光が私を射抜き、ツーっと背中に冷や汗が伝った。


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