今宵、キミが砕け散る



 「やったぁ!じゃあ恭ちゃん達に言わないと」



 子供みたいにはしゃぐ優香は、私の手首を掴んで走りだした。



 「ちょ、まって!」



 その後ろから佐城の声とバタバタと足音が聞こえる。



 「あ、優達遅いよ!」



 ちょうど向かおうとしていたのか、ばったり加賀美にあった。その後から、美苑と佐城が追いついた。



 「ごめんね!しーちゃん、恭ちゃんどこにいるかわかる?」


 「えっとね、今電話してるよ。もうすぐ戻ってくるんだと思うんだけど……」



 噂をすれば……というのか、こっちに歩いてくる都司が見えた。


 「恭ちゃん!」と早速聞きにいく優香を、少し後ろで待つことにした。



 「琴瀬さん?」



 耳元で囁かれた色気のある声に、ゾワリと鳥肌がたった。


 勢いよく振り向くと、美苑と佐城が笑っていて、さっきと状況が違うのは、きっと佐城が私の味方じゃないということだ。


< 242 / 324 >

この作品をシェア

pagetop