今宵、キミが砕け散る

 自分の左手が、右腕を抉るように爪をたてる。

 「宵‼︎」

 嶺緒に両手首を掴まれて、やっと体が止まった。

 「っ、れお……」

 私が名前を呼ぶと、嶺緒の瞳が揺れた。

 「ちょっと思い出しちゃって」

 大丈夫、そう意味を込めて微笑んだ。

 「ごめんね」

 ぐっ、と体が引き寄せられ、嶺緒に抱きしめられた。

 「よい、」

 掠れた声が、鼓膜を刺激した。


 
 

 
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