今宵、キミが砕け散る
「で、でもさ……。宵のお父さんすごい若かったね」
しーちゃんの言葉に、確かにと思った。高校一年生の娘がいる人で、こんなに若々しい人はそういない。
私が知っている恭ちゃんの両親は、見た目は若いけど40代と言っていた。
「うん。そうだね」
嶺緒さんは喋り方や雰囲気に若者感が出ていた。
でも、なんだろう。この違和感……。
心の奥がモヤモヤして、何かがしっかり来なくて、「あぁ、そうなんだ」と納得しきれていない部分がある。
わからないけど、なんか引っかかるなぁ……。
そんなモヤモヤに、首を傾げていると宵と嶺緒さんが戻ってきた。
「あ、えっと……。宵ちゃん?」
嶺緒さんが宵ちゃんの肩に腕を回して、側から見れば仲睦まじい家族なんだけど……。
宵ちゃんは俯いて、長く少し湿った髪の毛の隙間から見えた耳が赤くなっていた。