今宵、キミが砕け散る
皇 嶺緒 side

 手首を掴んで、自分を傷つける宵を止めた。

 大丈夫、そう痛々しく微笑む宵に、心臓が鷲掴みにされたような感覚に陥った。

 嗚呼、俺はなんて役立たずなんだ。

 自分の情けなさを呪いたくなった。

 もっと俺が宵のことを見ていたら、と。

 「よい、」

 思わず抱きしめると、甘い香りが鼻を掠めた。

 こうなることは初めてじゃない。

 ましてや宵と出逢った頃なんかは、ほぼ毎日のように自分を傷つけていた。

 だからか、最近はやらなくなっていて安心していた。

 
 
 
< 26 / 324 >

この作品をシェア

pagetop