今宵、キミが砕け散る
「そうしてくれると、助かる」
「ん、わかったよ」
「って、いうか。佐城、私になんか用あったの?」
そういえば、何か言いかけていた気がする。
ふと思い出してそう聞けば、佐城も本来の目的を忘れていたようでハッとしていた。
「そうだそうだ。嶺緒さんが、朝ごはんできたから姫ちゃんを起こして来てほしいって」
「あ、りょーかい。顔洗ってコンタクトつけたらすぐ起こしに行くから、佐城……、先にリビングに戻ってていーよ」
それに佐城は頷いて、洗面所から出て行こうとしたとき、何故か立ち止まって振り向いた。
「琴ちゃん、」
「ん?」
優しい声で、柔らかい表情で、佐城は私の名前を呼んだ。
「俺は、気持ち悪いとは思わないよ」
「え……、?」
あまりに突然で、変な声が出てしまった。
気にせず言葉を続ける佐城を、ジッと見つめる。
「すごく……、綺麗だよ」
本当に、今日の佐城はどこかおかしい。