今宵、キミが砕け散る
壊れゆく平和と続かない日常
荒川 仁 side
鼻につく酒と煙草の匂いが、この倉庫中に充満していた。
それに慣れてしまった自分は、もうどのくらいここにいるのかというと、そこまで経っていないのが現実だ。
精々、1ヶ月と少しくらいといったところか……。
「おい、田中ァ」
「はい、なんすか?」
潜入にあたり、名前は田中大佑と、あまり害のなさそうな名前に改めた。といっても、ここではそう名乗っているだけなのだが。
東では、幹部という位置にいた俺も、ここではまだ入ったばかりの新人だ。
糞な北のメンバーどもに敬語を使わないといけないし、雑用も俺の仕事だ。
日々溜まるストレスは、東に戻ったときに渚あたりを殴って発散すると決めている。
「ちょっと俺ら女とヤってくるからよぉ、ここの掃除頼むわぁ」
「……うす」
ヤってくるって、どうせそこら辺歩いている女でも捕まえてレイプしてくるんだろ。
それを止められないのが胸糞悪い。いじめられているクラスメイトを見て見ぬふりするみたいな。