今宵、キミが砕け散る
「ねぇ、あれって恭夜さん達じゃない?」
隠れているつもりなのかもしれないけれど、全く隠れられていない優香達が、私たちを監視するように電柱の後ろや塀に這っている。
怪しげなサングラスを、優香と加賀美……佐城までもがつけていて案外ノリノリな様子。
「なに、やってんのあの人たち……」
隠れる気が本当にあるのか、ないのか。いや、少なくとも都司と美苑はそんな気はなさそうだ。
「宵……、優香さんに今日は溜まり場行かないってメールしたって言ってたよね?」
「うん、言ったよ。言ったから私も困惑してる」
星は強いらしい。一度も喧嘩をしているところは見たことがないが、真紀いわく東の幹部である彼らといい勝負だという。
「俺が守るのに……」
そう小さく呟いた星は、どうやら自分1人では私を守りきれないと思われていると思っているようだ。
「まぁ、楽しそうだから気づかなかったことにしておこうよ」
現に優香はあんぱんを、加賀美は牛乳を持っている。昭和の2時間刑事ドラマかよって内心ツッコミを入れたいところだ。ただ、佐城はあんぱんでも牛乳でもなくチュッパチャプスを加えていた。
何故か違和感がない優香達の子供心は、まだまだ衰えそうにないなと思った。
「……じゃあ、行こうか?」
何を思ったのか、星は笑みを浮かべて私の手をとった。指を絡めていわゆる恋人繋ぎをする。
「そうだね、」
別に手を繋いではいけない理由なんてないから、そのまま私たちは校門を出てケーキを食べにカフェへと向かった。