今宵、キミが砕け散る
店に入って先に着くと真っ先にメニューを取った。
どれも美味しそうで、何にしようか迷っていたら無意識に眉間に皺が寄る。
「星、もう決まった?」
星はメニューを置いて、私を優しい顔で見ていた。
「うん。無難にチョコケーキにするよ。宵は?」
「ん〜……。じゃあ、これにする!」
私が指さしたのは、ケーキの上にフルーツやらチョコレートやらがたくさん乗ったケーキだった。
「……うん、りょーかい」
一瞬、ホントに食べれるのかという目で見られたがそんなの気にしない。
「……にしても、いつまでついてくるつもりなのかな。優香達は」
「なんか、やりにくいな……」
ボソッと呟いた星に私は苦笑いを溢した。
「お待たせしましたぁ〜!」
甘ったるい声を出しながらケーキを机に置く若い女の従業員。明らかに星の顔を見て頬を染めていた。
それに星は作った笑みで、必死に堪えているようだった。私は普通に接していたからたまに忘れてしまうけど、そういえば女が嫌いだったんだ。
「あの、もしよかったら連絡先をーー」
「彼女と来てるんで、そういうのはちょっと無理っす」
「……え、あ」
そこでやっと私に気がついたらしいその人は、私を視界に入れるなり顔を歪めた。