今宵、キミが砕け散る
「行こ。宵」
さっさとお会計を済ませた星は、私の手をとって早足で店を出る。
「ありがとう、星」
「全然。……言ってなかったけど、俺駅前のホテルでバイトしてるんだよ。最上階のレストランで。来る人大体、皆品がいいから、絡まれることないし」
「え、そうなんだ……。でも、なんか似合うかも」
「はは。宿泊してなくても入れるし、今度来てみて。料理、めっちゃ美味しいから」
「うん、そうする。じゃあ、優香といこうかな」
「うん。待ってるよ」
お店を出て少し歩いたとき、私はあることに気がついた。
突然立ち止まって鞄を漁り出した私を星は不思議そうに見ている。
「や、やばい!携帯忘れた!」
「え、まじで?早く取りに行かないと!」
「あ、私1人で行ってくるから待ってて!星は休んでて!」
もしかしたらまたあのしつこい店員さんに絡まれるかもしれない。それはそれで色々めんどくさいし。
「すぐに戻ってくるから!そこいて!」
私は星の返事を聞かずに走り出した。