今宵、キミが砕け散る
「何……、してんの」
優香が囲まれていたところは狭い路地裏で、まだ明るいこの時間から連れ去るにはうってつけな場所だった。
都司達の姿は見当たらないし、そもそもどうして優香が1人でいるのかがわからない。
もしかして……、また勝手な行動したのか?優香ならあり得ると、未だに自分の存在価値に自覚を持っていない彼女を一瞥すれば、私が来たことに安心したのかさっきまで強張っていた表情は少し柔らかくなっていた。
「あはは。見てわからない?これからこのオヒメサマ、連れていくんだよ〜?」
「いやー、俺たちもしかしたら幹部昇格あり得るかもよ!?これで東潰したら、俺らに統括任せられねぇーかなぁ」
「やっぱ、4番地区のトップに立つより、オヒメサマ攫ってカエデさんに渡した方が俺らの地位、手っ取り早く上がるかもしな!」
意気揚々と話す男達。そのうちの1人が言った名前に、私はピクリと反応した。
「カエデ……?」