今宵、キミが砕け散る
「っ……、」
顔を青くして、優香を押さえている手は震えている。
「ねぇ、北のトップに、東のオヒメサマを攫えって言われたの?」
少し声を低くしただけでびびっている男に、笑いが込み上がってくる。
「ねぇ?どうなの?」
「お、俺らはっ……!」
男の力が緩んだのを見逃さず、私は素早く男の顔面に蹴りを入れた。
「ぐあっ」
鼻血を吹き出した男は、そのまま後ろによろけて尻餅をついた。その隙に、優香の手首を掴んで私の方へと引き寄せる。
「っ、宵ちゃ……」
優香の身体は、わずかに震えていた。
「うん。もう大丈夫だよ」
「あり……がと、う」
私の胸に顔を埋め、プツリと緊張の糸がとけたのか涙を流した。