今宵、キミが砕け散る
「……、優香。ちょっと離れてて」
後ろで起きあがろうとしている男を見て、そう言えば優香は大人しく私を離した。
「お前っ、北にこんなことしてタダで済むと思ってんのか……」
「思ってるよ。だってあんた達、ただのカエデの駒でしょ?アイツ、自分のお気に入り傷つけられたら起こるけど、どーでもいいあんたらみたいな奴らはどうこうしたって別に気にも留めないよ」
アイツの名前を呼んだだけで胸糞が悪くなる。
脳裏に浮かぶ映像と、響く声。
思い出したくないのに、忘れてしまいたいのに、それは深く身体に刻み込まれている。
「わかってて、北に入ったんでしょ?」
狂ってる奴らばっかりじゃない。一部にはまとも……まだ、マシな奴はいるだろうけど、北に入るって決断しただけで結局はみんな同じなんだ。
何かしら欠けていて、自分の居場所を力で作る。
奪って奪って、アイツに操られていることにすら気づかずに。
バカだなぁ……。
口には出さず、私の言葉に放心する男に憐れみの視線を向ける。