今宵、キミが砕け散る
「……カエデ、さんは、関係ないっ」
突きつけられた事実。それは少なくともこの男の目を覚まさせる材料になったはずだ。
「東の、ヒメを捕まえたら……、カエデさんにいいお土産ができるって、アイツら……センパイの話の話しに乗っかって、俺らだけで実行しようとしたんだ!」
「ホントに?」
男の前髪を掴んで、顔を上げさせる。その顔は鼻血と涙でぐしゃぐしゃになっていて、でも目は私としっかりあっていた。
「カエデ……さんは、俺の、恩人なんだっ!だから、何か、やくに……役に立ちたくてっ」
北にも、カエデに忠誠心がある奴はいたのか。それに関心を抱くと同時に、アイツは人を助けるような奴じゃないから、恩人という言葉を疑問に思った。
「駒でも、役に立つならなんでもいいんだ!ホントに、カエデさんは関係ない……!」
「……、そう」
ここまで心酔しているのなら、私がどうこうしようにもできないなと、掴んでいた髪を離した。