今宵、キミが砕け散る
「ね?いいでしょ」
フッと、口元を緩めた男は、優香向かって拳を振り上げた。その拳は、迷わず1番弱い優香から狙っているようだった。
「きゃあ……!」
反射的に両腕で頭をガードする優香を、庇うように私は抱きしめた。
ガンッと米神に衝撃が走って、そのまま地面に優香と倒れ込んだ。
「っ……」
「あっは!力、強かったかな?」
脳震盪を起こしたのか、頭がクラクラして視界が歪む。心なしか、わずかに吐き気を催して、あの男が本気で殴ったのだと分かった。
まじで、腐ってんな……。
「宵ちゃん!大丈夫!?」
私の腕の中で身を捩る優香から腕を解けば、未だ倒れている私の身体を揺さぶってくる。
「ん、大丈夫……」
だから、ちょっと待って欲しい。
殴られたところを手で押さえながらゆっくりと優香に支えられて立ち上がる。真っ直ぐ前を見据えると、ぼやけていた視界はだんだんとクリアになっていく。
ピントがあって、視界に映った男は心底面白そうに笑みを浮かべていた。