今宵、キミが砕け散る
君、赤を知る
side 加賀美汐梨



「いたか!?」


後ろから声が聞こえ、振り向けば、いつもとは違う余裕のなさそうな恭夜がそこにいた。


「いない、どこにも。……ねぇ、やっぱり!」


信じたくないけれど、そういうことなのかもしれない。信じたくないけれど、優香はさらわれてしまったのかもしれない。

……しかも、よりによって北に。

自分の不甲斐なさに涙が出そうになるのを堪える。

不意にメールが届いた音が聞こえ、恭が眉間に皺を寄せながらも、ポケットから取り出した携帯を見た。


「は、?」


恭の口から漏れた声が俺の耳に届いて、また何かが起こったのかと不安が募る。

心臓が今までになくらいに暴れて、この世界の怖さを今更ながらに悟った。


「渚が、星に会ったって……」


ひとつひとつ、紡がれる言葉を聞き逃さないように耳を澄ます。







「———琴瀬も、いなくなったみたいだ」








どうしてこんなにも、残酷なのか。

僕には、覚悟が足りなかったのか。




終わりへのカウントダウンは、音を立てずにやってきた。


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