今宵、キミが砕け散る
side 神崎優香



滲む視界と、揺れる身体。

車窓から見える景色は、もう私の知らないものとなっていた。

後ろにも前にも、横にも知らない男の人に挟まれて、私は気を失っている宵ちゃんの手を握りしめた。



         * * *



「いいから自分の罪を償えよ」


そう言って去っていった男の人と、宵ちゃんは知り合いなのだろうか。そして、私たちはこれからどうなってしまうのだろうか。

思考が中々纏まってくれなくて、恐怖で押しつぶられそうだった。


「……優香、絶対私から離れないで」


さっきとは違う、切羽詰まった様子の宵ちゃんに、ドクリと大きく心臓がなった。



それなりに理解していたつもりだった。

この立場は崖の様に危うくて、1歩間違えれば、恭ちゃん達が今まで積み上げてきた全てが崩れてしまう。1番最初に芹くんが教えてくれた事だった。


この世界のことを、恭ちゃんたちと過ごしていくうちにだんだん知っていった。

残酷で、非道で、常識なんて通用しない。

勝者こそが、1番、”えらくて””ただしい”のだと。


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