今宵、キミが砕け散る


バカって言う焦ったような宵ちゃんの声が聞こえた。逃げようとするけれど、足が地面にくっついた様に動かない。

ああ、やっぱり私は足でまといにしかならないんだ。

ぎゅっと目を瞑り、これから来るであろう衝撃を覚悟する。


「ぐあっ!」


次の瞬間、男の人の呻き声と何かがぶつかった鈍い音が私の耳に届いて、そっと目を開く。

そこには、重なる様に地面に倒れている男の人が2人。完全に意識は落ちていて、何が起きたのか分からない私はただ呆然としていた。

もしかして、と視線を向ければ安心したような宵ちゃんと目があって……


「宵ちゃん避けて!!」

「え、?」


———ガンッ


地面に倒れる宵ちゃんが、スローモーションに見えた。

油断していた私たちは、一瞬反応が遅れてしまった。

それを理解することを私の脳内が拒む様に、目の前の現実から目を背けてしまいたい衝動に駆られた。


「よ、いちゃん?」


ふらり、おぼつかない足取りで意識を失っている彼女に近づき手を伸ばす。


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