今宵、キミが砕け散る


「っ、……」


乱暴に廃れた廃虚のどこかの部屋中に放り込まれた。そのときに、膝を擦りむいて顔を顰めた。


「大人しくしとけよ」


バタンと強く扉が閉じた音だけが響いて、足音が部屋から遠ざかって行く。


「宵ちゃん!」


名前を呼んでも、動かない宵ちゃんに不安が募る。

もし宵ちゃんが死んじゃったら……なんて、考えるだけでも恐ろしくて、早く目を覚ましてその不安を消し去って欲しかった。

早く目を開けて、笑いかけて欲しかった。


「宵ちゃんっ……」


そう、私が呼びかけたとき


「ん……」


小さな声が、宵ちゃんの口から漏れた。


「……あれ、ゆーか?」


ぽたり、ぽたりと私の涙が宵ちゃんの頬に落ちていく。

頭くらくらする……と縛られた手を器用に使って起き上がった宵ちゃんに、いつものように抱きつけなかったから、その肩に顔を埋めた。


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