今宵、キミが砕け散る


「ありがと」


結構高い位置にある排気管は私では届かなそうだけど、背の高い宵ちゃんなら届きそうだ。

早く人が来る前に、と宵ちゃんは器用にネジを回し始めた。

それは上手くいったようで、あっという間に全てのネジが外れて格子が取れた。


「よし。優香、持ち上げるからあの中入って」

「う、うん!わかった!」


排気口の前に立てば、宵ちゃんが私の腰を掴んで持ち上げた。

入口に手を掛け、中を除けばギリギリ人1人が入れそうな空間が真っ直ぐ広がっている。

ただ少し薄暗く、虫か出てきそうな雰囲気にたじろぐ。


「いける?」

「う、うん!」


ぐっと腕に力を入れて、その中に体をねじこませようとしたその瞬間。


———ガチャ


何の音沙汰もなく、重い扉が開いた。


< 315 / 324 >

この作品をシェア

pagetop