今宵、キミが砕け散る
「いつまでその強気な態度が取れるかなぁ?」
余裕そうな態度をとる男の足を払って素早く立ち上がる。
それにしては、迷惑な話だ。
こっちは勝手な争いごとをしている彼らに巻き込まれただけだというのに。
どれくらいたったか。
この疲労しきった体にしては結構辛抱強くもった気がする。息が乱れて、どこか折れているんじゃないかってほどにギシギシと鈍い音が遠く聞こえる。
殴りかかってくる男たちを避けるのに精一杯で、こっちからはなかなか手を出せない。
「っ、」
フラリと体が傾いて、私は受け身も取れずに倒れ込んだ。
「ったく。手間かせさせやがって」
躊躇なく、乱暴に地面に押さえつけられて美苑の言葉を思い出した。
『男、舐めんじゃねぇよ』
確かに、舐めていたかもしれない。自分の力を、過信しすぎていたかもしれない。
あのときのように、美苑と同じように手首を掴まれてビクともしない。
男と女の力の差は、どうしても技術だけじゃ埋められない。
優香は大丈夫だろうか。
都司立ちにあって、保護されているといいけど……。
気持ち悪い、男の息が耳元で聞こえてゾワゾワと鳥肌が立った。
制服を剥ぎ取られ、素肌が晒されていく。
「ぐあっ、!」
突如、その声とともにのしかかっていた重みが消えた。
「……ふざけんじゃねぇぞ」
空気が小さく震えた。
いつもとは違う、ドス黒い声色を響かせて。