今宵、キミが砕け散る
あの頃に戻れたら。
……なんて。
もう今更だと、考えるたびに苦しくなる。
「ーい」
「ーーよい」
名前を呼ばれて顔を上げた。
「あ、ごめん考え事」
心配そうに眉を下げる嶺緒に申し訳ない気持ちが募る。
「そろそろ開店なんだけど、今日は休むか?」
こういうことがあった後の嶺緒は、とことん私に甘い。
まるでいつもの扱いが嘘のように。
「明日、入学式だろ?」
そう言われてハッとする。
そうだった。明日から私は高校生なんだった。