今宵、キミが砕け散る
神崎 優香 side

 「もう!しーくんのせいだよ!」

 折角の入学式は、しーくんのせいで遅刻して出れなくなってしまった。

 「ごめんって……」

 そのため今は、溜まり場に来ている。

 本気で反省しているらしく、しーくんに頭から垂れた耳が見えるのは気のせいだろうか。

 「もう……」

 その姿に私は弱い。

 「今度は寝坊しないでね!」

 しーくんは顔を上げて笑顔で頷いた。

 「優香」

 不意に名前を呼ばれて、振り向くと恭ちゃんが手招きをしてきた。

 「どうしたの?」

 私が不思議に思って近づいていくと、ぐいっと腕を引っ張られ抱きしめられた。

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