今宵、キミが砕け散る

 「ありがとね……」

 入学手続きも、学費も払ってくれているのは嶺緒だ。

 何から何までお世話になっていて、少し申し訳なく思う。

 「はは、いーっての。ガキは甘えとけ」

 本当に嶺緒と家族ならいいと、本気で思ってしまう時がある。

 それならきっと、幸せで。

 私が求めて止まない、求めてはいけない幸せだと思う。

 最近平和ボケしているせいか、自分の性格が丸くなったような、変わったような気さえする。

 前はこんなに笑わなかった。
 前はこんなに喋らなかった。
 前はこんなに、幸せに縋っていなかった。


< 62 / 324 >

この作品をシェア

pagetop