今宵、キミが砕け散る

 独りで大丈夫だった。

 寧ろ独りの方が楽だった。

 こんなの私じゃないと、"俺"が叫んでいる。

 今の時間が日常になって、私の、俺の普通が変わっていって。

 いつか、いつかあの日々が……私の思い出となって色褪せていくのが怖かった。

 ー軋む骨

 ーー飛び散る鮮血

 ーーーつん裂くような悲鳴


 何、してんだろ……。

 今私は何しているのか。

 こんなに平和でいいのだろうか。

 考え出したら止まない自問自答が、頭の中で繰り返される。

 「宵?」

 嶺緒の真っ黒な瞳と目が合う。

 「疲れたか?」
 「うん、ちょっとね」

 慌てて答えると、嶺緒は苦笑して休んでから来いよと、また厨房に戻っていった。

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