今宵、キミが砕け散る

 実際、ここのお店に来るお客さんは嶺緒目当てが多い。

 まぁ、ここのご飯が美味しいと言う理由もあるけれど、ここまで賑わっているのはやはり嶺緒の人柄だろう。

 「はい」

 椅子に座って休んでいる嶺緒に水の入ったコップを渡す。

 「おー、ありがとな」

 お風呂上がりに牛乳を飲むみたいに、嶺緒は水を一気飲みした。

 「なぁ、宵」

 少しの沈黙の後、私の名前を呼ぶ嶺緒に視線を向けた。

 「な、何?」

 あまりにも真剣な顔をしていて、言葉に詰まってしまう。

 「話したいことがあるんだ」



 
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