今宵、キミが砕け散る



 強い力で、殴る手を止められた。

 「人殺しになりたいのか?」

 顔を上げると、綺麗な男が無表情で俺を見ていた。

 「……離せ」

 俺はコイツを、壊したいんだ。

 コイツが壊れてしまった姿を想像して、口角が上がった。

 「へぇ……」

 心底面白くて仕方がないというように、男は俺の目を見て言った。




 「お前、うちに来いよ」




 あの日、あの時。

 お前に出逢えてよかったよ、なんて。

 絶対に、言ってやんない。






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