今宵、キミが砕け散る

 「ああ、あの時か」

 ヤスも懐かしそうに目を細めた。

 「流羽さんに、会いてぇな」

 「俺も」

 目を閉じれば今も鮮明に蘇る、あの日の光景。

 流羽は笑っていた。

 ヤスも、皆皆、笑っていた。

 悲しみに歪んだ顔なんて、ひとつもなかった。

 ただ最後に、流羽が見せた悔しそうな顔が忘れられない。

 「東、西、北、南」

 あんたの夢、俺の代で叶えて見せたよ。

 「皇(央)」


 
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