今宵、キミが砕け散る

 『俺は、嶺緒を置いていったりしない』

 もう、寂しくないよ。




 『流羽、やっと、叶ったよ』

 電話の向こうで、流羽の啜り泣く声が聞こえた。

 『お前が俺を、置いてってんじゃねぇか』

 『違ぇよ。やっと隣に立っただけだ』

 『ははっ、……ありがと、な』

 それはこっちの台詞だよ。

 素直じゃない俺は、その言葉がどうしても言えなかった。

 


 
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