今宵、キミが砕け散る

 「ありがとう」って、1番言わなくちゃいけないことでさえ、一言も。

 病院に着くと誰も何も喋らない静寂が広がっていた。

 元東のメンバーも、皆が唇を噛んで泣くまいと堪えていた。

 ……ここだ、と俺の勘がいっている。

 扉を開けると、ベッドに横たわった流羽さんが静かに眠っていた。

 「っ、うぁ、ぁ……」

 頬を伝っていく涙。

 それを止める術を、俺は知らない。





 胸が苦しくて、上手く呼吸ができない。

 嫌だ……。

 もう冷たい流羽の手を握る。

 俺の体温、俺の命全部、持っていっていいから。

 もう一度、あんたの笑顔を見せてよ。



 
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