2番手の俺がキミのヒーローになる物語

淋しい想い

「はぁー...」
大きなため息をつく俺の前の席で新はこの後提出する宿題を急いでやっている。
「どうしたんだよ。朝から元気ないけど」
前を向いたまま俺に声をかける。俺は突っ伏した顔を上げることも出来ず項垂れる。
「俺にも色々あるわけよ」
「よし!間に合った」
嬉しそうに振り向き、俺の頭を指で突っつく。一応話を聞く気はあるようだ。
「で?何があったんだよ」
「...奈緒が真白先輩と出かけるんだと」
俺は顔を上げ、教室の前の方で香坂さんと話している奈緒を見ながら言う。
「へー。デートするんだ」
「なっ!」
俺は大きな声を出しながら思わず立ち上がる。
近くにいた人達が一度俺の方を見るが、すぐに自分たちの話に戻っていった。
「どーどー」
暴れた動物を落ち着かせるような口振りで新は俺を宥める。
「はぁー...」
俺はまた大きなため息をついて席につく。
「奈緒ちゃんから聞いたの?」
「あぁ。昨日奈緒の部活終わりに会って言われた。嬉しそうな顔してたよ」
「ふーん。こりゃ蓮都の出る幕はないかな」
「やっぱ新って俺のこと応援してくれてる訳じゃないんだな」
「別にそういうわけじゃねぇよ。友達には楽しく笑ってて欲しいし...」
窓の外を見ながら話していた新は真面目な顔をして俺の方を向く。
「ただ蓮都って好きなんだろうってことは分かるけどいつも幼馴染として隣にいるだけで彼氏になりたいって思ってる風に見えないから」
彼氏になりたいという思いはある。しかし奈緒に好きになってもらう行動をしていない俺はそう思われても仕方なかった。
「...新だったら好きな子できたら俺みたいに悩んだりせずに行動するんだろうな」
「...どうかな」
笑顔で言う新。その顔からは何を考えているのか読み取ることは出来なかった。
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