2番手の俺がキミのヒーローになる物語
「ふわぁあ」
あくびをしながら家を出ると馬のしっぽのような髪が揺れているのが見えた。
「よっ」
「わああ」
俺がその髪を引っ張るとそこにいた人物、深澄奈緒は大きな声を上げ俺の方を向く。
「ちょっと蓮都!いい加減髪引っ張るのやめてよね」
「揺れてんの見ると掴みたくなるんだよ。嫌だったら髪型変えるんだな」
「でもこの髪型が一番走りやすいからなぁ」
奈緒は髪を触りながら言う。
「今日からだっけ?陸上部の練習にまぜてもらうの」
「そう!」
奈緒は満面の笑みで言う。好きな子の笑顔を見たにも関わらず嫌な気持ちになった俺は顔をそらした。
俺が嫌な表情をしていることにも気づかず、奈緒は笑顔のまま話し続ける。
「仮入部は来月からだけど真白先輩に練習参加したいですって言ったら顧問の先生に頼んでくれたぽくって...。今日から練習させてもらうんだ」
奈緒が嬉しそうに話す理由が真白先輩の近くにいられるからだと分かってしまった俺は淋しい気持ちを必死に抑えた。
「テンション上がりすぎてこけんなよ」
「だ、大丈夫だよ」
自信なさげに言う姿に思わず笑ってしまった。
「な、なによ」
「いや、なんでもねぇよ」
少し怒った顔をしている奈緒の頭に手を伸ばし、そのまま優しく撫でた。
「頑張れよ」
「うん!」
奈緒は嬉しそうに返事をした。
あぁ、この笑顔は好きだ。
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