２番手の俺がキミのヒーローになる物語

「いつから写真撮るの好きなの？」
「お父さんが元々写真が好きで、私も興味持って中一の時から始めたんだ」
「そうなんだ。良い趣味だね」
「そうかな...」
香坂さんは恥ずかしそうに俯く。しかしその口元は嬉しそうに微笑んでいたため俺も笑顔になった。
「あの、私こんな風に男子と２人でいることなくて...」
「あ、ごめん。邪魔だった？」
「いや！そうじゃなくて...その緊張しちゃって上手く喋れなかったらごめんねっていう...」
「そんな気使わなきゃいけないような相手じゃないから大丈夫だよ」
俺は笑いながらなるべく優しく伝わるように言う。すると香坂さんはほっと安心した顔になった。
「うん、ありがとう...」
和やかな空気が流れたことに俺は安心する。そしてまた楽しそうに写真を撮る香坂さんを静かに見守る。俺は熱中する好きなことを見つけたことがなかった為香坂さんのことを羨ましいとも思っていた。
香坂さんは噴水に近づいて写真を撮っていた。その時何処からか華やかな音楽が流れ出した。時計を見ると１３時５９分。
「あ、やべっ」
俺は噴水から香坂さんを庇うように抱きしめる。
「えっ！？天樹くん！？」
その時噴水から勢いよく水が吹き出し、数本の水の柱ができた。１分ほど水が吹き出した後、また静かに水が流れる噴水となった。
「ここ3時間毎に水が吹き出すって忘れてた。近くにいると濡れちゃうことがあるから...濡れなかった？」
「あ、えっと...私は大丈夫。でも天樹くんが...」
香坂さんはあたふたしながらも濡れてはいないようだった。俺は背中と髪が少し濡れていたくらいだったため、気にさせないように優しく笑う。
「俺は大丈夫。カメラもあることだし香坂さんが濡れなかったなら良かったよ」
「あっ...あの...私も忘れてたから...ごめんね...その...ありがとう...」
香坂さんの耳が赤くなっているような気がしてどうしたのか聞こうとしたその時だった。