２番手の俺がキミのヒーローになる物語

ヒーローの俺

夢を見た。
目の前には楽しそうに笑っている奈緒がいる。いつもの笑顔で話している様子を見て、俺は幸せに感じている。
「蓮都。今度はあっちに行こう」
テーマパークだろうか。色々な乗り物がある場所に俺たちはいた。
奈緒はジェットコースターを指差している。
「あぁ、行こう」
俺たちは並んで歩く。
奈緒の隣にいる俺。それはずっと変わらない俺の居場所。
そう思っていた。
でも何故だろう。胸がざわつく。
俺は本当にここにいて良いのだろうか。
俺がいるべき世界は本当にここか...？
「蓮都？」
奈緒が不思議そうな顔をして俺を覗き込む。
「...いや、なんでもない」
ここに奈緒がいる。それだけで俺がここにいる理由になる。
他のことはもう考えなくていいか...。奈緒さえいれば俺は...。
『蓮都』
その声は俺の心に直接響いた。
「え？」
目の前にいる奈緒は何も話していない。それなのに間違いなく俺の心には奈緒の声が届いた。
「どうしたの？」
「あ、いや」
『ねぇ、起きてよ。蓮都。蓮都...』
泣きそうになっている奈緒の声。俺は奈緒を笑わせたい。奈緒の笑顔が大好きだから。でも今奈緒は泣いている。目の前にいる奈緒は笑っているのに...。
あぁ、そうか。
俺が笑わせたい奈緒は目の前の奈緒じゃない。俺が好きな奈緒はここにはいない。
「何かあった？」
「...ううん」
俺は一番優しい声で言った。
「今から会いに行くよ。奈緒」