【激短編】ガラスの中の青
「もし、そうなら、私も同じ気分…かな?」



俺の答えも待たず、お前は少女の様な笑みを向ける。


それに再び俺の胸元が締め付けられるのを感じた。


ついに耐えきれず、どうせクサイついもあって、



「そうだよ…」



と、俺はお前を後ろから抱き締めた。


お前は、それを受け入れながら、



「私、絵本の事言ったんだけど…」



と、くすぐったそうに笑った。


絵本とは、俺達が学生の頃から目指していた夢の事だった。


俺が絵を書き、彼女が分を書いた。


今までは赤字だらけの自主出版で、かなり貧乏な暮らしを強いられていたが、ほんの数年前に小さいながらも俺達の絵本を出版してくれる会社が見つかり、夢の印税生活を始められたのだ。


絵本はそこそこ売れ、俺には挿絵の仕事が入ったり、彼女にもエッセイの仕事が来たりで食いっぱぐれる事はなくなった。


最近では絵本自体も大手の出版社からオファーが来、映像化も視野に入れてとの事だったから、たまに夢でも見てるのでは?と当人同士が困惑する程だ。



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